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「映画『ももいろそらを』の注目してほしい点は?」
小林啓一さん(以下小林) ―特別に「ココがポイントです」というところはなく、ちょっと大人っぽくない言い方ですけど全部が見どころですね(笑)
でもこの作品を見た後に、ちょっとした価値観などの変化を感じてもらえるとうれしいですね。 原田博志さん(以下原田) ―モノクロ映画で敷居が高いように思われがちですが、女子高生のいづみという主人公を追って見ているとすごくおもしろいと思います。 「モノクロ映画にした理由は?」小林 ―「今はすぐに過去になってしまい、未来から見れば今なんかあっという間だし、今ツライことがあったとしても将来的に見れば辛くない!未来目線で見れば簡単に乗り越えられる!」というテーマが自分の中にあったので、それを表現するためにモノクロ映画にしました。 また、普通の女子高生の映画だと思われてしまうと思うので、モノクロにすることによって普通とは違うことをアピールする効果もあると考えました。 目の前の人物の思いや小さな気持ちの変化を感じ取ってもらいたいので、色の変化を加えないことに対する抵抗はなかったですね。 原田 ―映画祭などで映画を観たひとからは、「モノクロだけど色が見えた」という感想をいただくこともありましたね。感情移入によって、そういう風に見えることもあるのかなと思います。 「第24回東京国際映画祭で『日本映画・ある視点部門』の作品賞を受賞したときはどんな気持ちでしたか?」
小林 ―僕はほっとしましたね(笑)ほっとしたというか、東京国際映画祭で賞を獲れなかったら未来がないなと思っていたんです。こういうところで評価されなかったら仕方ないんじゃないかなと。それなので割とほっとしたというか、まだやれるんじゃないかと思いました。まだやれるんじゃないかと言っても、まだ1本(「ももいろそらを」)しか撮っていないんですけど…(笑) 原田 ―やっとスタートラインに立ったみたいなところはあったかもしれないですね。あと、辞められなくなったというのもありますね(笑) 「次回作の予定は?」
小林 ―オタクのカップルが東京に友だちを連れ戻しにくるという内容のものを考えています。 原田 ―次はカラー映画です(笑) 「昔から映画を作りたいという気持ちはあったのですか?」
小林 ―映画は映像の最高峰にあると思ってやってみたいなーとは思っていたのですが、どういう風にやればいいかわからなかったし、はたから見ていて好きになれずなかなか挑戦できなかったんです。ずっと映画の制作や映像を作る仕事をしていたのですが、雇われる仕事ばかりだったので、そのフラストレーションのようなものが溜まっていって、いろんなものが1つになって今回の作品に至った感じです。 原田 ―ものをつくる0から1にする作業のようなものがやりたくて、メーカーなどに入って開発することも考えたのですが、なかなかそのような就職先は難しくて、なので映画制作を仕事にしました。特に映画はフリーが多いので、どこかしらの部署には入れるかなと思って…。そこから少しずつ経験を積みました。 「映画関係に携わるきっかけは?」
小林 ―好きなことを仕事にしたいと漠然と思っていたので、映像系もありかなとは思っていました。就職活動する気が全然なくてずっとのんびりしていたけど、ようやく活動する気になって自分が知っている会社を4つくらい出した時に2つぐらいが映像系の仕事で、映像系の会社に入ったのがきっかけですね。
「小林さんと原田さんにとって刺激とはなんですか?」
小林 ―「新しい価値観」じゃないですかね。こういう見方もあるんだ、そういう考え方もあるんだということが刺激となって、モノをつくるきっかけになることもあります。 原田 ―自分は「周りの人」に刺激を受けますね。新しい知り合いが増え、今までの枠から広がることで考え方や価値観がまったく違う人がまわりに増え…となっている気がするので。この作品を作ったことでも繋がりが広がりましたね。 「最後に学生に対して一言お願いします」
小林 ―恐れないでいろんなことに挑戦してほしいですね。月並みですけど、失敗してもすぐに過去になってしまうので。学生時代はそういうことが許される時期でもあるので思い切ってやった方がいいです。見方が変わりますからね。とにかくいろんなものに触れればチャンスが増えると思います。
原田 ―未来に軸足を置いて考えて行動してほしいですね。今がどんなに大変でも将来にイメージできる大きな目標があれば耐えることができると思います。 ありがとうございました。
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■小林啓一(Keiichi Kobayashi)
1972年千葉県出身。明治大学卒。 テレビ東京のオーディション番組「ASAYAN」の ディレクターを経て、ミュージックビデオ界に進出。 DA PUMP、Dreams Come true、ミニモニなどの作品を監督。 特にDA PUMPとは「Night Walk」から「Summer Rider」まで 全ての作品においてタッグを組んだ。 「アイフルホーム」などのCM、「秘密潜入捜査官」シリーズなどの ビデオ作品を経て「ももいろそらを」で長編映画デビュー。 第24回東京国際映画祭日本映画・ある視点部門で作品賞を受賞し、 世界最大のインディーズ映画祭であるサンダンス映画祭からは、 「日本映画の新鮮で革新的な監督の誕生」と絶賛されている。 現在、長編二作目「ぼんとリンちゃん」を準備中。
■原田博志(Hiroshi Harada)
1976年東京都出身。東京電機大学卒。 映画「秘密」(監督:滝田洋二郎)の作品にて製作部として キャリアをスタート。続く、映画「ムルデカ17805」にて 元大映プロデューサーである藤井浩明氏に師事。 以下、様々な映画現場でキャリアを積む。 主なプロデュース作品に「ただ、君を愛してる」 「きみにしか聞こえない」「エクスクロス 魔境伝説」等がある。 2011年に製作した「ももいろそらを」が第24回東京国際映画祭 日本映画・ある視点部門にて作品賞を受賞。 サンダンス映画祭ワールドシネマコンペティション正式出品、 ロッテルダム国際映画祭、香港国際映画祭等14か国20に及ぶ映画祭にて 上映され世界の映画祭で賞賛された。 2013年1月12日(土)より新宿シネマカリテ他にて ロードショー公開が決定。
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